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森の名手・名人


(社)国土緑化推進機構では、「もりのくに・にっぽん」運動として、平成14年度から「森の名手・名人」を毎年、全国から公募・選定しています。
「森の名手・名人」は、森林に関わる分野において優れた技や知見をもってその業を極め、生活者の模範となっている達人のことです。
当協会から推薦し、認定を受けられた方は、本年度で40名になりました。
これまでに認定されました方々をご紹介いたします。


 ▼ 平成14年度から平成18年度までの認定者




◆ 平成30年度に認定された方
【加工部門】

透かし彫り工芸師  山口 哲雄 さん(黒滝村)

約60年間林業に従事した経験を活かし、約25年前に知人の手伝いをきっかけに「透かし彫り工芸」を始められました。透かし彫りは使用する柾目木材(貼材の有効活用)の選定が重要とされ、切り抜き作業では繊細な技術が必要とされます。木目を透かす際には、長年の経験で細かな絵柄も手際よく彫り製作されておられます。

檜皮葺  小西 繁俊 さん(吉野町)

神社仏閣の屋根の檜皮葺の材料として、檜皮剥ぎから葺きまでを全て行っておられます。特に檜皮に関してはよく吟味を行い、耐久性がある良い質のものを吟味しているそうです。主に社寺仏閣の桧から採取する為、木を枯らさないように、同じ木から8~10年のサイクルで採取します。一坪分の檜皮を作るのに10日ほどかかる為、極めて根気のいる作業です。

三宝製作  吉谷 良浩 さん(下市町)

吉谷木工所は明治43年に創業され、現在6代目の良浩氏まで、三宝製造の伝統技術が脈々と引き継がれている吉野でも数少ない木工所です。「吉野ひのき」特有の粘りを活かした特殊な「曲げ」の技術を持ち、今日では自身の息子へ技術継承を行い、木工の町下市町の明かりを消さないことを念頭に後継者育成に取り組んでおられます。


【森の伝承・文化部門】
紙漉き  植 貞男 さん(吉野町)

和紙の原料である「楮(こうぞ)」作りから自ら手がけている和紙漉き職人です。「良い和紙は良い楮から」と、特に楮作りには手間暇をかけておられます。下刈り、芽つみ、間引き等を行い、徐々に節のない良い幹に育てます。出来上がった和紙は「宇陀紙」として高く評価されており、掛け軸の表装用に使用される為、美しく丈夫で長持ちする紙に仕上げておられます。


【森の恵み部門】
シイタケ栽培  井上 順一 さん(吉野町)

長年、安心安全の国産原木にこだわったシイタケ栽培を行い、優良なシイタケの生産者です。シイタケ栽培にまつわる様々な課題解決の為に、2001年に「国産原木シイタケ生産者の会」を設立。低価格で販売できる菌床栽培が市場に増えた為、農林水産大臣に栽培方法の表示化を陳情し、実現されました。

【森づくり部門】
そま師  西谷 喜代志 さん(黒滝村)

林業における作業の内容は多様ですが、植栽から伐木、搬出に至るまで、総じて経験が豊富です。100年を超える大径木を思ったところに倒せる技術には定評があり、その大径木は神社仏閣等で使用されています。現在は30才代の若手の作業員や地域おこし協力隊員に安全な作業方法を教える傍ら、自分も率先して作業に加わっておられます。




◆ 平成29年度に認定された方
【森の伝承・文化部門】
手漉き和紙

昆布 尊男 さん(吉野町)

昆布さんは、昭和54年に、実家の生業行である和紙制作を継ぐことを決意され、その後37年間にわたり地元の自然環境を活かし漆濾紙(吉野紙)の制作を行ってこられました。
漆濾紙は極めて薄い楮(こうぞ)紙でありながら引っ張りに強く、ふっくらとした紙の地合いがろ過に適しているため、江戸時代以来、漆や油を濾す紙として利用されてきました。漆濾紙の制作は、川晒し・チリ切り・紙素炊き・灰汁出し・細打ち・水洗い・紙漉き・板干し・選別までの工程すべてを手作業で行うことから、夫婦が力を合わせ作業を行っておられます。漆濾紙の特徴的な作業は、紙漉前に吉野川での濁出しを行い、純粋な繊維のみとなるように原料処理には手間をかけるところで、さらに吉野の自然水を使用することにより高品質な風合いのある漆濾紙を実現しておられます。
 漆濾紙は高品質であるがゆえに文化財の保存に使う漆の漆濾しやお寺の灯明の油濾し等として利用されているほか、美術品やアクセサリーの保護、高感度顕微鏡レンズ磨きや日本刀の手入れの仕上げ等にも利用されています。現在では、ほとんどが機械漉きになり、手作業で漆濾紙を製作しているのは昆布さんのみで、高品質な漆濾紙を作る技法を守り続けておられます。



◆ 平成27年度に認定された方々
【森づくり部門】
大径木の伐採・造林

鍵 敬二 さん(川上村)

鍵さんは、38年間にわたり地元の山林で造林・伐採作業に従事し、技術を培ってこられました。豊富な経験と確かな技術により、伐採作業はもとより、地形、傾斜、材の種類、樹高等を一目で見分けて、森林状況に最も適した伐採作業の手順や搬出方法を選択し、安全で効率的な伐採・集材作業を行うことができる数少ない技術者のひとりです。川上村は、吉野杉・吉野桧で全国に名を馳せた吉野林業の代表的な地域ですが、今では文化財にも利用されるような優良な大径木は少なくなっています。その伐採には長年の経験に培われた確かな力量が必要とされており、鍵さんは乞われて、国の主要な施設の天井板の用材とされた250年生を超える杉の大径木を無事見事に伐採されました。また、林業従事者が少なくなっている中で、後進の指導・育成にも熱心に取り組まれ、業界の研修会等においても模範となる作業を披露されており、吉野林業後継者の指導者として大きな存在です。

【森の伝承・文化部門】
手漉き和紙

福西 正行 さん(吉野町)

優れた和紙を作るには、原料である良質なコウゾと美しい空気と清らかな水に恵まれていることが必要で、千数百年の歴史を誇る吉野手漉き和紙は、吉野町国栖地区を中心に受け継がれてきました。福西さんは、その伝統技法を守る福西和紙本舗の六代目です。福西さんが作る和紙は、自家で栽培したコウゾの皮を剥ぐ工程から糊づくり、天日干し作業まですべてが手作業です。飛鳥時代から続く技法により吉野の白土が織り込まれた宇陀紙は、主に国宝等の文化財の修復に使われており、近年では海外の文化財修復にも使われているそうです。伝統的な工法・技法を継承しながら、草木染和紙や吉野杉を使った壁紙を開発するなど、海外クリエーターの革新的なアイデアにも対応できる柔軟な技術を併せ持ち、手漉き和紙の魅力と可能性を世界へ発信しておられます。また、地元小学校では、すべての工程を自分たちの手で作る卒業証書づくりを指導したり、県内外でも紙漉き体験教室を開催するなど、世代を超えて幅広く活動しておられます。


◆ 平成26年度に認定された方々
【加工部門】
竹細工

浦嶋 正幸 さん(山添村)

竹細工による番茶煮出し用の茶袋(ちゃんぶくろ)の制作をされています。二つ合わせにして中に番茶を入れて煮出すためのもので、浦嶋さんの製品はどれも絶妙な合わせ具合により、沸騰したお湯の中でもはずれることがありません。その他にも、多種多様な竹カゴや竹ザルも繊細な仕上がりで、人気があります。
浦嶋さんは、地元で生まれ育ち、地元に密着した生活を送ってこられました。お若い頃から竹製品に興味を持たれ、近所の方に教えてもらいながら自作されておられましたが、60歳代から本格的に多種多様な竹製品の製作・販売を手掛けられるようになりました。なかでも茶袋は、今では浦嶋さんおひとりが製作されており、その技法は貴重であるといえます。失われつつある伝統を引き継ぐ使命感を持って、竹の切り出しから製作・販売までおひとりでこなされています。



◆ 平成25年度に認定された方々
【加工部門】
振子(ふりこ)

泉岡 邦彦 さん(桜井市)

昭和59年9月吉野木材協同組合連合会に入組して以来30年間、一貫して木材市売業務に従事し、現場作業員として椪立(はいたて:原木を選別し積み上げる)作業、見積もり、せり市の振子(ふりこ:その日の材価を決定づける値付け人)等その職務を全うされていらっしゃいます。現場の責任者として活躍し、荷主、買い方の相手からの信頼も厚いそうです。


【森づくり部門】
造林手

吉田 光之輔 さん(下市町)

長年に亘り造林手として植え付け、下刈り、枝打ちの仕事に従事され、今後も引き続き山の手入れに注力する方針だそうです。また、磨丸太(桧丸太、杉丸太、海布丸太、錆丸太、人造絞丸太、天然絞丸太等)の生産もされており、優れた製品を生産・出荷されています。また、地場産業の育成・発展に心掛けていらっしゃいます。
【森の恵み部門】
シイタケ栽培

上田 克彦 さん(天理市)

長年に亘り原木キノコにこだわり、市内の山林においてシイタケ、ナメコ、クリタケ、ヒラタケ、ムキタケ、マイタケ、エノキタケも生産し、朝市等では人気商品となっているそうです。5年程前からは、栽培が難しく国内では珍しいキクラゲの原木栽培に取り組り組まれており、栽培技術の確立及び地域の活性化に寄与されています。


◆ 平成24年度に認定された方々

【森づくり部門】
そま師・運搬集材

津本 修 さん(宇陀市)

中学校を卒業してから、山林での伐木・造材・集材作業に従事してこられました。その長い経験から、胸高直径1m以上の大径木でも牽引器具を使わず、クサビだけで思ったところに倒すことができる貴重な技術の持ち主です。また、5kmの索張り技術もお持ちです。近年では、適切な作業道のルート選定並びに高性能林業機械を利用した搬出にも優れた技術を修得し、伝統技術と近代技術の両方を兼ね備えた森の名手といえるでしょう。

【加工部門】
野鍛冶

田上 昭三 さん(十津川村)

鋼は島根産の和鋼を使用し、燃料に自家製の炭を使われます。新品の製造だけでなく、修理や調整も行っておられます。刃物なら刃渡りだけでなく、硬さ、重さ、重心等を変えたり、峰打ちするために形状を変えたりもされます。使う人の体格や用途に応じて調整を行った手打ちの道具は、体によく馴染んで、非常に使いやすいと評判です。
【加工部門】
磨き丸太、文具生産

森本 英雄 さん(桜井市)

高校卒業後、家業である林業に従事し、植林から伐採までの技術を磨き、本格的に磨き丸太の生産加工を開始されました。そして、磨き丸太に適した原木を選木し品種に適した伐採時期、加工方法を確立されました。卓越した技術で年平均2,000本を生産加工し、業界関係者からの信頼も厚いそうです。また、吉野杉を利用したボールペン作りに取り組み、美しい木目を生かし高い評価を得ておられます。 
【森の恵み部門】
しいたけ栽培

車谷 年秋 さん(吉野町)

年植2万本、有効ホダ木3万本、合計5万本のホダ木を家族で管理されており、現在奈良県下最大規模の原木生しいたけ生産者です。図書館のスライド式本棚にヒントを得てスライド式ホダ場を考案、地域に普及されました。廃ホダはカブトムシ等のマットとして出荷するほか、自家農園でのカブトムシの養殖にも利用されます。地元で出た廃材を受け入れハウス等の暖房に用いるなど、無駄のないエコな生産活動を実践しておられます。


◆ 平成23年度に認定された方々


【森づくり部門】
そま師

中 秀作 さん(十津川村)

中学校卒業前から山仕事に慣れ親しみ、卓越した体力で複数のチェーンソーを駆使して的確なハリ取り作業、伐倒作業、木取り作業を丹誠込めて行ってこられました。中さんが伐倒、造材した木は、原木市場で人目を引くほど美しく、高く評価されています。十津川村林業の歴史を知る貴重な人物でもあり、林業全般の技術に優れた十津川村における木材伐採の第一人者です。地域特産マンネンタケの育成にも尽力されておられます。

【森づくり部門】
造林手

竹内 信市 さん(東吉野村)

吉野林業の中心地である東吉野村において伝統的な吉野林業の技術を踏襲しながら、植栽本数・枝打ち・除間伐等を工夫し、独自の育林技術を確立されました。復元された奈良市の朱雀門・大極殿にも竹内さんが育てられた材が用いられるなど、竹内さんの出材品は高く評価されています。また、吉野林業の改善にも長年努力されており、まさにリーダーというべき存在です。


◆ 平成22年度に認定された方々

【森づくり部門】
筏師
深瀬 常保 さん(十津川村)
深瀬さんは、学校を卒業してから、十津川村において鉄砲堰をつくり木材を流送しておられました。陸送になる前は十津川村から新宮まで新宮川を流送しており、十津川村内の水量の少ない区間を鉄砲堰にて流送し、流れの緩やかな中継地点まで木材を運んでいました。ダムの完成により筏流しは終わりましたが、その後は近畿各地で筏流しの指導にあたり、近年では林業の歴史の貴重な語り部となり、環境教育等の指導をしておられます。
【森づくり部門】
道づくり・林業機械の改良
岡橋 清元 さん(兵庫県西宮市)
岡橋さんは、自ら自社経営山林に赴き、所有山林の機能を最大限に高める努力を重ね、かつ自然環境保全にも配慮し、森林を繊細に取り扱いながら、林業経営のネックとなる伐出作業の省力化・低コスト化を図るため、災害に強く壊れない高密度路網の開設と狭い幅員に合わせて工夫された林業機械を導入した作業システムを構築されています。現在も高密路網を年間3,000m開設、その総延長は78,000mに及びます。


◆ 平成21年度に認定された方々

【森の恵み部門】
山野草料理人
前田 忠慶 さん(御所市)
復員後、川魚料理店を開店される傍ら、料理学校で指導にあたってこられました。また、山野草の料理指導も行い、奈良県南部の民宿業界にも貢献してこられました。
現在でも、山や、近くの川辺にある山野菜の調理法を伝え、森の恵みを大勢の方に伝えておられます。

【森の伝承・文化部門】
森林ガイド
野崎 和生 さん(下北山村)
村内にツチノコ共和国を設立し、年に2回、都市部を中心とした参加者に下北山の自然体験を指導し、好評を得ています。
また、山野草に関する知識が豊富で、村内の世界遺産「前鬼山」等で活躍され、解りやすい巧みな話術で子どもたちを引きつけておられます。
【森づくり部門】
造林手
辻谷 達雄 さん(川上村)
川上村に生まれ、吉野林業の特色である密植、枝打ち、多間伐といった集約的な施業を担っている造林・育林技術者の第一人者です。後継者の育成にも力を注いでおられます。「山の学校達っちゃんクラブ」では、都市部住民や子供達に自然に親しむ活動を進めておられます。


◆ 平成20年度に認定された方   
                          
【加工部門】
竹細工
澤井 功 さん(五條市)
籠や箕などの日用品から工芸品まで、竹細工全般の製作と販売を手がけておられます。製作にあたっては、自ら竹藪に入り、素材となる竹の吟味から完成までを一貫して携わっていらっしゃいます。
  永く「無銘の業物」を誇りとする職人に徹してこられ、伝統の手法を守ってこられました。第一級の竹籠を手掛ける各流派家元御用達の花籠商「南善一」から高く評価されており、「竹巧朋」銘を授与されました。高野山の諸寺院からの贔屓も多いそうです。


◆ 平成19年度に認定された方々


【森づくり部門】
磨丸太加工
上田 善嗣 さん(吉野郡吉野町)
上田さんの基本的な経営理念は吉野林業の基本となる高品質材の生産ですが、自身の保有規模、齢級配置、資金力等を考慮して、中小農林家が可能な短伐期高収益林業を成立させ、知的林業を実践しておられます。
上田さんの考案された施行事例は、1)杉優良挿し木品種による磨き丸太仕立て、2)杉天然絞品種による磨き丸太生産及び秀木材生産、3)杉挿し木品種による海布丸太生産、4)杉天然絞丸太と海布丸太混植施業等です。
【加工部門】
ケヤキ指物師
山口 勝 さん(吉野郡黒滝村)
指物家具には古くから「四方蟻」「水組」「朝顔留め」等の継ぎ方があり、いずれも木にホゾ穴を開けて凹凸に組み合わすもので、釘などを使わなくても頑丈に留めることができます。山口さんは県下で唯一の「水組」の技法を受け継ぐ家具指物師です。
「水組」は、捻れ組とも呼ばれる高度な技法で、角から見るとき継ぎ目が「水」の字に似ていることに由来します


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